2019年2月、ヤンゴンからバスでニャウンウーに入り、パガン遺跡群を歩いて回った。到着日は移動の疲れもあったため、近場を軽く散策してカフェに寄る程度にしたが、翌日は早朝から動き出し、アーナンダ寺院やシュエズィーゴン・パゴダを含め、かなり多くの遺跡を見ることができた。
ニャウンウーの街は、車が通る道についてはしっかり整備されている場所が多い一方、歩行者用の道路はあまり整っておらず、道路脇の道を通るような形だった。コンクリートの上を歩くことは少なかったように思う。ただ、ヤンゴンと比べると交通量は明らかに少なく、バス停から宿まで歩く程度なら特に問題はなかった。
Nyaung Lat Phet Viewing Mound
翌朝、最初に向かったのはNyaung Lat Phet Viewing Moundだった。少し小高い丘になっていて、目の前には池がある。早朝にもかかわらず、丘の上には気球が見える時を待つ観光客が数多く集まっていた。日の出とともに飛んでくる気球は、池の水面にも姿を落とし、空の淡い色と合わせて風情があった。パガン平原では毎朝、熱気球からパゴダ群を眺めるバルーンツアーが行われており、複数のツアー会社が催行している。料金は決して安くないようだが、朝焼けの中を無数の仏塔とともに気球が飛ぶ光景は、この場所ならではのものだと思う。

周囲に見える仏塔は朝日に照らされ、昼間とは違った落ち着いた雰囲気をまとっていた。乾いた土地に点在するレンガ色の小さな塔と、低い木々の影が長く伸びていて、遺跡群を見て回る一日の始まりとして印象に残った。

スラマニ寺院とダマヤンジー寺院
次に向かったのは、すぐ近くにあるスラマニ寺院だった。緑がかった屋根を載せた重厚な外観で、レンガの色や細かな装飾からも歴史を感じた。スラマニ寺院は1183年、ナラパティシードゥー王によって建立された。「スラマニ」は「最高の宝石」「小さなルビー」を意味し、内部のフレスコ画でも知られている。後に建てられたティーローミンロー寺院のモデルになったとも言われている。

訪れた時は補修中で、上部には緑色の覆いが見えていたが、内部の仏像などはきれいに設置されていた。古い建物をそのまま見るというより、現在も修復を続けながら保存されている遺跡だという印象が強かった。

そこから西へ進むと、ダマヤンジー寺院がある。立派な門の前でしっかりと靴を脱ぎ、緑色の敷物の上を歩いて本堂へ向かった。裸足で大きなレンガ造りの建物に入っていく流れが新鮮だった。門のアーチや厚い壁に囲まれた通路には、寺院が長い時間を経てきたことが表れていた。

ダマヤンジー寺院は基壇一辺約78mで、パガン最大規模の寺院とされる。1170年、父と兄を殺害して即位したパガン王朝第5代ナラトゥー王が、その贖罪として建立を命じたと伝わっている。しかし建設中にナラトゥー王自身も暗殺されたため、工事は未完のまま中断された。現在も内部の一部がレンガで塞がれた状態になっている。尖塔部分は欠けていたものの、多くの礼拝者が訪れており、今も慕われている寺院なのだと思った。

シュエサンドー・パゴダ周辺
さらに北西へ進むと、シェエサンドーパゴダが見えてきた。5層の段上になっているのが特徴で、中央には内部へ続く階段があった。パガン王朝の創建者アノーヤター王によって1057年に建立され、高さ約100m、5層のテラスの上に釣鐘型の仏舎利塔が安置されている。釈迦の聖髪が納められているとも伝わる。

境内には奉納鐘もあった。鐘を鳴らして功徳を得る習慣があるとのことで、日本の寺院にある時を知らせる鐘とは違った効用に文化の違いを感じた。以前は夕日鑑賞の定番スポットとしてテラスに登ることができたが、2018年以降は登頂が禁止され、現在は下から眺めるのみになっている。

西へ少し歩いたところでは、パゴダの横に綺麗なピンク色の花が咲いていた。周囲には茶色い土とレンガ色の遺跡が広がっていたため、鮮やかな花がひときわ目立っていた。遺跡だけが続く景色の中で、こうした植物の色が入ると印象が変わる。

近くのLoka Oakshaung Templeは大きな建物ではないものの、周囲を木々に囲まれていた。木陰とレンガ造りの小さな寺院が組み合わさり、広々とした遺跡群の中でも優しい雰囲気を感じる場所だった。

タビニュ寺院とゴドーパリィン寺院
そこから北上し、Anawrahtaのメイン道路を渡ってさらに進むと、タビニュ寺院がある。入口を入ってすぐのところに黒と白の色調の大仏があり、その配色と大きさが印象に残った。タビニュ寺院は1144年頃、アラウンスィードゥー王によって建立された、高さ約61mのパガンで最も高い寺院である。「タビニュ」は仏陀の無限の知恵を意味する。建物は二層構造で、仏像は上層に安置され、東西南北の四面に入口を持つ。

近くの高台からは、赤い屋根と金色の装飾が特徴的な黄金王宮を見ることもできた。黄金王宮、正式名アリマッダナプラ宮殿は、かつてこの地にあったパガン王朝の王宮を、1989年からの発掘調査をもとに2003〜2007年に木造で復元したものだという。古い壁画に描かれた宮殿の姿を参考に建てられ、現在は主要な観光スポットの一つになっている。

さらに西へ行くと、ゴドーパリィン寺院がある。タビニュ寺院と同じ12世紀の建物らしく、白と黒を基調にした色調も似ていた。ゴドーパリィン寺院はパガン遺跡群の中で2番目に高い寺院とされ、11世紀末から12世紀にかけて、ナラパティシードゥー王のもとで建立されたと伝わっている。夜のライトアップも人気が高いという。

内部には、金色の仏像がゆったりとした様子で台座に座っていた。厳かな寺院の中で、表情や姿勢にはどこかリラックスした感じがあり、ほほえましく見えた。外観の大きさだけでなく、内部に置かれた仏像の雰囲気にもそれぞれ違いがある。

ブーパヤー・パゴダとアーナンダ寺院
そこからエーヤワディー川の近くにあるブーパヤー・パゴダへ向かった。金色で丸みを帯びた姿が特徴的で、青空によく映えていた。ブーパヤー・パゴダはパガン最古のパゴダとされ、「ブー(瓢箪)パヤー(仏塔)」の名の通り、独特な円筒状の外観を持つ。エーヤワディー川に面した高台にあり、古くから川を航行する船の目印にもなってきたという。

ここからは川の眺めも見ることができた。朝からたくさんのパゴダを見てきたので、広い水面と遠くまで開けた景色は、少し疲れていた目の休養になった。遺跡が続く平原とは違い、川沿いでは視界が大きく開けるため、途中で立ち止まって眺める時間を作るのもよかった。

次に向かったのが、パガンでも最も有名な寺院の一つであるアーナンダ寺院だった。金色の均整の取れた尖塔の装飾が美しく、建物全体も荘厳な形をしていた。アーナンダ寺院は1105年頃、パガン王朝第3代チャンズィッター王によって建立された。「アーナンダ」は仏陀の弟子の名にちなむ。均整の取れた白亜の外観から「ビルマのウェストミンスター寺院」とも呼ばれ、1975年の地震で被害を受けたものの、その後修復されている。

中に入ると、壁には絵画などが飾られていた。大きな建物の内部に残る壁面の装飾を見ていると、ここが単なる観光地ではなく、長い間信仰の場であり続けてきたことを感じる。建物の外観の整った美しさとは違い、内部では壁画や空間の奥行きに目が向いた。

内部には、東西南北を向いた4体の金色の立仏像が安置されている。そのうちの一体は、立った姿勢で手を合わせて奉られており、暗い堂内で金色の姿が強く印象に残った。外から見た白い建物と、内部の金色の仏像との対比もアーナンダ寺院の見どころだと思う。

この時点でまだ午前10時だったが、午前5時半起きで何も食べていなかったため、お腹が空いてきた。そこで川沿いにあるFantasia Gardenに入り、カレーと魚の揚げ物、フルーツシェイクを頼んだ。しっかり食べたことで、ここまでの旅の疲れが一気に吹き飛び、体力がかなり回復した感じがした。レストランからは川の眺めもよく見えるため、遺跡を続けて回る途中の一休憩にも向いていると思う。

ニャウンウーに戻ってシュエズィーゴン・パゴダへ
最後はニャウンウー方面へ戻った。途中で、白いパゴダとピンク色の花が組み合わさった景色を見た。白い塔を囲むように花が咲き、乾いた遺跡の平原とはまた違う明るさがあった。

ニャウンウーではシュエズィーゴン・パゴダにも立ち寄った。金の彫刻が美しい建物がいくつも並び、これまで見てきたレンガ色の遺跡とは異なる華やかさがあった。シュエズィーゴン・パゴダはニャウンウーに位置し、アーナンダ寺院と並んでパガン王朝を代表する宗教建築物とされる。11世紀、王朝創始者アノーヤター王のもとで建設が始まり、3代目チャンシッター王の治世に完成した。「シュエ」は金、「ズィーゴン」は祝福された土地を意味し、高さ約40mの仏塔は後のビルマ式パゴダの原形になったとされる。仏陀の額骨と歯が納められているとも伝わっている。

最後に、存在感のある金色のパゴダを見て帰途についた。朝から一日かけて遺跡を巡った後だったので、金色の塔が強い光を受けて立つ姿が、その日の締めくくりとして残った。

この一日で、ほぼ一生分のパゴダを見たような気がした。それでもパガンにはまだ数多くのパゴダがあり、一度では見切ることが到底不可能だと言われるのも無理はない。規模や外観だけでなく、建立された時代、補修の状態、内部の仏像、そこで祈ってきた人々の歴史まで考えると、各パゴダにはそれぞれの特徴があり、感慨深いものがあった。
最後の日にはミャンマーのビールを飲んだ。一日中パゴダを見学してきた翌日で、疲れも残っていたためか、最近では一番おいしく感じられた。ヤンゴンから少し離れてはいるものの、ニャウンウーとパガン周辺は見どころが非常に多く、ミャンマーに来たら外せない場所だと思う。

頻繁に訪れるのは難しいかもしれないが、次に来る機会があれば、まだ回っていないローカナンダー・パゴダなども見てみたい。