クタイシからボルジョミへ移動し、温泉保養地として整備された公園と、その西側にあるペトレ要塞を歩いた。標高約800mの山間にあるため、到着して最初に感じたのは、クタイシより明らかに涼しいということだった。
ボルジョミへの移動
クタイシでは、コルキス噴水近くからバスでリオニ駅へ向かった。料金は0.6ラリ。リオニ駅はかなり質素な造りだったが、待合スペースはだいぶ広く、雨が降っても問題なく待てそうだった。日曜日だったからか列車はほとんど満員で、ハシュリ行きの車内も混み合っていた。それでも12ラリ程度で中継地点まで行けるなら安いものだと思う。ハシュリ駅からはマルシュルートカも考えたが、待つのが少し面倒だったため、タクシーを28ラリ程度で利用した。ハシュリの街の近辺は大規模な工事中で、道のほとんどがでこぼこしていた。工事が完了すれば、街並みは見違えるようにきれいになるのかもしれない。約40分でボルジョミ市街地に着いたが、この日は移動で疲れていたため、ホテルへ行ってそのまま就寝した。
駅舎は装飾の少ない簡素な外観で、正面には「Rioni Station」の表示があった。古い建物らしい壁面の意匠と、衛星アンテナや空調機器が同居しているのが印象に残った。

ボルジョミは、19世紀にロシア帝国時代の避暑地・保養地として発展した温泉保養地で、鉱泉水の産地として世界的に知られている。ボルジョミ渓谷を含む一帯は、ボルジョミ・ハラガウリ国立公園にも近い。翌朝は宿の方の好意で、無料の朝食を振る舞ってもらった。赤い色のボルシチにサラダ、パンなどが並び、歩き出す前の食事としてありがたかった。

公園へ向かう途中、中央で一回転して円形状になっている橋を見かけた。橋の外側には曲線的な屋根が連なり、背後の山の緑や周囲の建物と合わせて独特の景観になっている。周辺にはさまざまなお店があり、価格もそこまで高くないようだったので、滞在中に物で困ることはそれほどないと思う。

ボルジョミ公園散策
ボルジョミ・セントラルパークに着くと、入口にはしっかりした門構えがあった。入場料は5ラリ。公園は1850年に開園した鉱泉水公園で、1842年には正式な保養地として整備された記録が残っており、現在も渓谷沿いの森の中に広がる憩いの空間になっている。門の向こうには宮殿のような装飾を持つ建物や木々が見え、保養地らしい落ち着いた雰囲気があった。

園内を歩くと、円形に整備された花壇が目に入った。芝生の周囲に赤、白、紫などの花が並び、中央の木を囲む形で手入れされている。周囲にはベンチや遊歩道があり、散策する人の姿も見えた。さらに進むと、上流から流れてくる川が園内を通っている。森の緑に囲まれた川沿いの道は歩きやすく、街中とは違う水音を聞きながら進めるのがよかった。



そこからさらに、多少のアップダウンがある山道を進むと硫黄温泉プールに行ける。公園入口から約2.5〜3km上流にあり、水温は年間を通じて約27度前後で一定だという。今回は水着を持ってくるのを忘れてしまったため、入ることはできなかった。利用する場合は水着とビーチサンダルが必要で、タオルは現地で提供されるとのことなので、持ち物を準備しておけばよかったと思う。
プールには入れなかったため、公園まで引き返し、ミネラルウォーターを汲んで帰ることにした。給水所は屋根のある円形の構造物の中にあり、周囲には鉱泉を飲む人がいた。市販のペットボトルのボルジョミにもそれなりに癖のある味があるが、本場の源泉は硫黄や温泉成分の味がはるかに強かった。少しずつしか飲めず、チェコのカルロヴィ・ヴァリでも飲泉をしたものの、こちらの方が成分が強く出ているようにも感じた。ボルジョミの鉱泉水は地下8〜10kmから湧き、コーカサス山脈由来のミネラル分を含む。9本の井戸から採取され、25kmのパイプラインを通って地表に届く時点では38〜41度の温かさがある。天然では炭酸を含まない軟水で、瓶詰め時に炭酸が加えられているという。

Mirza-Riza-Khan邸
帰り道には、青い歴史的な家屋であるMansion of Mirza-Riza-Khanがあった。細かな装飾を施した正面と青白い外壁が周辺でもひときわ目立ち、森の中の公園建築とはまた違う存在感を見せていた。通称フィルーゼと呼ばれるこの邸宅は、1892年にロシア駐在イラン領事だったミルザ・レザ・ハーンが夏の別荘兼保養施設として建てたものだという。ジョージア様式、ペルシャ様式、ヨーロッパ様式が融合した建築で、外観にもその複数の要素が表れている。この日は行き帰りで約3時間歩き、森林浴をしながらよい運動になった。

翌日は、ボルジョミの西側にあるペトレ要塞を目指した。その日もホテルの方が昼食にスープを作ってくれたので、食事を済ませて準備万端で出発した。野菜の入った温かいスープとトマト、キュウリを食べてから歩き始められたのは助かった。

チャイコフスキー像
道の途中にはチャイコフスキーの銅像が立っていた。木々に囲まれた建物の前に立つ像を見て、ボルジョミは温泉保養地だけでなく、音楽にもゆかりのある街なのだと感じた。実際に、像の隣には音楽学校が建っている。

ペトレ要塞ハイキング
メイン道路を進むと左手に木造の橋が見えてきた。橋を渡り切ってさらに進むと、列車の線路に出る。線路の中を歩いていくと要塞へ向かう山のふもとにたどり着くということで、そのまま線路に沿って進むことにした。木の板を使った橋は周囲の山や住宅地の中で目立つ存在だった。





そこから要塞へ直接たどり着けるか試したものの、先はほとんど断崖絶壁で、斜面もつるつると滑ったため、引き返すほかなかった。後で調べるとルートは二つあり、もう一つは線路を進む途中、もっと手前で左折する道だった。そちらの方がはるかに簡単に要塞へたどり着けるとのことで、今回は残念だったが、また機会があれば試してみたい。
下山の途中では、森の中で数体の馬が放牧されているのを見かけた。木漏れ日の下で草を食む馬の姿は、線路や急斜面を歩いた道の印象を少し和らげてくれた。このルートは険しいため万人に薦められるものではないが、要塞がきれいに見える場所まで歩きたい人や、ある程度運動量のあるハイキングを楽しみたい人には向いていると思う。

ボルジョミ公園は、鉱泉、川、森、歴史的建築をゆっくり歩いて楽しみたい人に向いており、ペトレ要塞は装備とルート選びに注意すれば、景色を目的に再訪したい場所だった。