暑さが落ち着いてきた2020年9月下旬、天気の良い日が続いたので、自転車を車に積んで浜松市周辺を走った。浜名湖の西側にホテルを取り、湖を1周するサイクリングと、弁天島、中田島砂丘、石人の星公園などを短い旅の中で巡った。
最初に立ち寄った弁天島では、浜名湖の湖口に向かって、海の向こうに立つ赤い鳥居を眺めた。水面の青に赤色がよく映え、背後には橋が横に伸びている。鳥居は高さ18mの弁天島観光シンボルタワーで、湖口の今切口近くにある無人島「いかり瀬」に立っている。冬至の前後1か月ほどには、鳥居の中に夕日が沈む「弁天夕照」が見られることで知られているが、私が訪れたのは9月だったため、その景色を見る機会ではなかった。

海辺には水上へ張り出した場所や手すりのある通路があり、そこに自転車を置いて鳥居を眺めた。自転車と湖、遠くの鳥居を一緒に写せるのがこの場所らしく、走ってきた実感も残った。弁天島周辺の海はきれいで、ボートの乗船場などもあり、写真に収めやすい景色が多かったように思う。

水辺の一角には小さな船が係留され、対岸には建物やヤシの木の並ぶ場所も見えた。観光地らしい大きな見どころだけでなく、船着き場や湖面の広がりを眺めながら歩けるところに、弁天島周辺の楽しさがあった。

浜名湖を自転車で走っている途中、なぜかゴリラの銅像にも出会った。住宅や道路の脇に、岩を組んだ台座の上で立つ黒っぽいゴリラが置かれていて、周囲の風景から少し浮いている。その突発的な感じが面白く、目的地へ向かうだけになりがちなサイクリングに変化がついた。こうした予想していなかったモニュメントに出会えるのは、自転車で周辺を巡る良さだと思う。

翌日は中田島砂丘へ向かった。入口付近には「中田島砂丘」と刻まれた大きな石があり、階段を上って砂丘へ入る。砂の上には歩いた跡がいくつも残り、先へ進むにつれて視界が開けていった。中田島砂丘は東西4kmにわたって広がり、鳥取砂丘、九十九里浜と並ぶ「日本三大砂丘」のひとつとされる場所だが、これは諸説ある。

砂丘を下ると、灰色がかった砂浜の先に海が広がっていた。砂と海の青のコントラストがはっきりしていて、場所によっては砂の起伏や、植生の残る部分も見える。遠州のからっ風によって風紋が生まれることでも知られているが、訪れたときは砂丘の広がりそのものを歩きながら楽しんだ。海岸へ向かう道は砂に足を取られやすく、歩くことに集中する場面もあった。

海側から振り返ると、なだらかな砂の斜面が広がり、その向こうに来た道が続いている。砂丘と海の境目は明快ではなく、風や波によって形が変わっていく場所なのだと感じた。夏にはアカウミガメの産卵地としても有名で、市の文化財にも指定されている。自然を眺めるだけでなく、そうした環境が残されている場所でもある。

砂丘では凧揚げをしている様子も見た。広い砂地の上空に凧が上がり、下では何人かが砂の上を歩いていた。毎年5月の浜松まつりでは、すぐ隣で凧揚げ合戦が開催されるというが、9月の訪問でも凧が空に浮かぶ景色を見ることができた。空の大きさと砂丘の開放感が合っていた。

その後、石人の星公園に立ち寄った。園内には均整の取れたモアイ像を思わせる石人が複数並び、背後の緑と青空を背景にすると、石の形がよく目立つ。メキシコのトーラーやイースター島のモアイ像を連想させる石人が多数配置されていることから、2015年に「石人の星公園」という愛称が付けられた。実際に歩いてみると、同じ石の造形でも大きさや表面の彫り方に違いがあり、一つずつ眺める時間が取れた。

別の場所には、大きな石の表面に人物や動物のような姿、渦巻き状の模様などを刻んだ彫刻もあった。芝生の上に単独で置かれているため、正面から全体を見渡しやすい。均整の取れた石人とは印象が異なり、公園内を歩きながらさまざまな石の表現を楽しめる点がよかった。

すぐ近くの風車公園では、広々とした公園内を散歩した。芝生の中に円筒形の風車が立ち、赤い屋根と黒い羽根が青空にくっきり見えていた。木々や整えられた草地の間を歩くと、砂丘や湖畔を巡ったあとの気分転換になり、ゆっくり過ごせた。石人の星公園と風車公園はいずれも県営の遠州灘海浜公園の一角で、中田島北地区・中田島中地区にあたる。

今回は短い旅だったが、浜松市周辺は文化・自然・グルメのどれをとっても見どころが多く、今後も自転車でいろいろ探索したいと思った。