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三保松原と御穗神社めぐり(羽衣の松・神の道など)

カテゴリ:寺社・自然・温泉訪問時期:2019年12月12月の気候: 4.8〜12.1℃ / 降水 88.7mm(雨7.5日)関連スポット:清水西里温泉 やませみの湯羽車神社三保松原神の道駿河国三之宮 御穗神社
三保松原と御穗神社めぐり(羽衣の松・神の道など)
松原越しの富士山

2019年12月上旬、天気のよい日に三保松原と御穗神社をめぐった。少し肌寒かったので、まず温泉で温まり、その後、これまであまりしっかり見たことのなかった三保松原を歩くことにした。

清水西里温泉 やませみの湯

最初に向かったのは、清水市街地からかなり離れた場所にある清水西里温泉やませみの湯。車でないと行きにくい立地だが、興津川上流の清水森林公園「やすらぎの森」の中にあり、周囲は自然に囲まれている。市営の日帰り温泉浴場で、1999年に開湯した。泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉、源泉温度は31度。内風呂のほか、男女各3槽の露天風呂があり、竹炭・竹酢を使った変わり湯や薬草湯もある。私が入ったときは竹炭の湯など珍しい風呂もあり、ぬるめから温かい湯までいろいろ楽しめた。自然の中で温泉に入るのは、やはり気持ちがよかった。岩風呂と檜風呂は週替わりで男女が入れ替わる。入館料は大人700円、小人300円で、1日券のため出入り自由。隣には地元の山菜や竹の子を使った料理を出す食事処「たけのこ」があり、園内には黒川キャンプ場もある。公共交通ではJR清水駅から約55分かかるため、アクセスは容易ではないが、車で訪れるなら温泉と周辺の自然を合わせて楽しめる場所だと思う。

建物は木造の落ち着いた外観で、入口の上屋には細かな明かりの飾りが下がり、背後には山の緑が広がっていた。温泉地らしい派手さはなく、森林公園の中の施設という雰囲気だった。

やませみの湯外観
やませみの湯外観

羽衣の松

温泉の後は三保松原へ向かった。羽衣の松は柵に囲まれてしっかり保護されており、周囲の松原の中でもひときわ存在感があった。羽衣の松は御穗神社の御神体で、三穂津彦命(大己貴命、大国主命)と三穂津姫命が降臨する際の依代とされている。天女が羽衣をかけたという羽衣伝説の舞台でもある。初代は1707年の富士山宝永大噴火の際に海中に没したと伝わり、二代目は高さ約10メートル、外周5メートル、樹齢650年に達したが立ち枯れが進んだ。2010年10月、近くの別の松が三代目に認定され、二代目は2013年7月に約3メートルの幹を残して伐採されている。現在の三代目は推定樹齢約200年だという。大きく枝を広げる松を間近に見ると、単なる名木というより、この場所の信仰を支えてきた木なのだと感じた。

羽衣の松
羽衣の松

羽車神社

羽衣の松の近くには羽車神社もある。小さな社だが、周囲には力強い松が生えていて、これぞ松原という印象だった。羽車神社は御穗神社の離宮にあたり、羽衣の松のかたわら、駿河湾を望む浜辺に建つ。祭神は御穗神社と同じ三穂津彦命、三穂津姫命。祭神が天の羽車の大鷲に乗って三保の御崎に降臨したという伝承が社名の由来になっている。石に願い事を書いて納める風習もあり、足元にはさまざまな願いが書かれた石が置かれていた。小規模ながら、海辺の松と伝承が直接つながっているような場所だった。

白い鳥居と旗に囲まれた社は、松の枝越しに明るい空を見上げられるつくりだった。石が積まれた足元からも、訪れた人がそれぞれの願いを残していることが分かった。

羽車神社の鳥居
羽車神社の鳥居

三保松原

海岸の方へ出ると、富士山の形がはっきり見えた。前回来たときは曇天でほとんど見えなかったので、この日は本当に良い松原めぐり日だったと思う。三保松原は三保半島の海岸沿い約5キロメートルにわたり、約3万本のクロマツが茂る景勝地である。御穗神社の鎮守の杜として守られ、日本三大松原、日本新三景の一つに数えられ、国の名勝にも指定されている。2013年6月には、ユネスコ世界文化遺産「富士山—信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産に登録された。羽衣公園付近から真崎までの清水海岸、砂浜と松林、御穗神社境内全域、「神の道」、清水灯台などが構成資産の範囲で、面積は64.4ヘクタールに及ぶ。歌川広重の東海道五十三次をはじめ、浮世絵や和歌にも描かれてきた。冬でも緑を絶やさない松は神の宿る木とされ、富士山を望めるこの地は古くから神聖な場所と考えられてきた。海岸では松林の向こうに青い海と富士山が見え、天気によって印象が大きく変わる場所だと実感した。

松原越しの富士山
松原越しの富士山

松林の中には、枝を大きく横へ伸ばした松が多く、木々の間から海岸の明るさがのぞいていた。砂地と松の影が続く景色は、富士山だけを目当てにするよりも、時間をかけて歩いて見たいものだった。

海辺の松林
海辺の松林

エレーヌの碑

海岸から戻ると、エレーヌの碑があった。日本の能「羽衣」に魅せられたフランスの舞踊家、エレーヌ・ジュグラリスに関する碑である。彼女は能を題材にした自作の舞踊作品を発表して成功したが、憧れの地だった三保松原を訪れることを望みながら、35歳の若さで病没した。夫のマルセルが遺髪を携えて三保を訪れ、その熱意に共感した地域住民によって、1952年に「エレーヌの碑(羽衣の碑)」が建立された。碑の下には、遺言に基づいて彼女の遺髪が埋納されている。松に囲まれた碑を見ていると、日本文化と海外の感性が交差する場所に思えた。

エレーヌの碑
エレーヌの碑

神の道

そこから北上すると神の道がある。羽衣の松から御穗神社の社頭まで続く約500メートルの松並木の参道で、両脇に松が並ぶ一本道は、この場所ならではの景観だった。木道が整備され、樹齢数百年の老松が続いている。羽衣の松を依代として降臨した神が、御穗神社へ至るための道とされ、現在も筒粥神事では海岸で神迎えの儀式を行い、神が依りついたひもろぎがこの松並木を通って境内へ運ばれる。海の彼方の常世国から神を迎える常世信仰に基づく信仰のあり方も、この道の意味につながっている。実際に歩くと、松の成長が強く、道路にかかっているような場所もあり面白かった。

松並木の木道
松並木の木道

木道の先には鳥居が見え、松のトンネルを抜けて神社へ近づいていく感覚があった。自然の中を歩く道でありながら、神社へ向かう参道としての方向性がはっきりしていた。

御穗神社の白鳥居
御穗神社の白鳥居

駿河国三之宮 御穗神社

神の道の終着点は、駿河国三之宮の御穗神社である。白い鳥居が神の道の終わりごろから見えてきた。日曜日だったが境内は静寂な雰囲気で、よく整備されていた。本堂は質素だったが、その簡素さがこの場所に合っているように思う。御穗神社は延長5年(927年)成立の『延喜式』神名帳に記載された式内社で、貞観7年(865年)に従五位上、元慶3年(879年)に正五位下へ神階が昇叙された。日本武尊が東征の際に立ち寄ったと伝わり、大和朝廷のほか、今川氏や徳川氏からも篤い崇敬を受けてきた。祭神は大己貴命(三穂津彦命、大国主命)と三穂津姫命で、御利益は縁結び、家庭円満、除災招福。11月1日の例大祭では湯立神事が行われ、舞殿では「羽衣の舞」と称される巫女舞が奉納される。「みほ」は御穂、御廬、三穂、三保とも書かれる。私は今回も家族と友人の健康と成功を願ってから帰宅した。

参道の先には木々に囲まれた境内が広がり、随所に据えられた石灯籠が静けさを引き立てていた。

境内の様子
境内の様子

境内の奥には唐破風の屋根に提灯を掲げた拝殿があり、この神社ならではの風格を感じさせた。富士山が観光資源として目立つ静岡だが、三保松原や寸又峡、伊豆半島の自然にも見どころがある。少し行きにくい場所を含め、こうした場所を今後も開拓していきたいと思った。温泉と自然、信仰の道をまとめて歩きたい人には、再訪してもよいめぐり方だった。

御穗神社の拝殿
御穗神社の拝殿
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