2019年11月上旬、山梨県と長野県をまたぐ旅行をした。寺社や湖をめぐり、最後は温泉で締める、自然の多い行程になった。
山梨県に来たらほうとうを食べようと思い、まずはほうとう専門店で山菜ほうとうを注文した。新鮮な野菜がしっかり煮込まれ、美味しいつゆと絡んだほうとうは絶品だった。山梨以外では食べる機会があまりないので、こちらに来た時にはだいたい食べるようにしている。その日は日が暮れかけていたため、蓼科のホテルへ直行。自然に囲まれたホテルで温泉につかり、そのまま就寝した。心身ともにリラックスできたように思う。
山菜と野菜が盛り込まれた、熱々のほうとうを味わった。

身曾岐神社
翌日は、山梨県北杜市小淵沢町上笹尾に鎮座する身曾岐神社へお参りに行った。均整の取れた本殿は神明造で、神秘的かつ厳かな雰囲気がある。身曾岐神社は、教派神道のひとつである禊教の教主・管長だった坂田安儀が1985年、昭和60年に創建した神社で、祭神は天照太神など。伊勢神宮を踏襲した本殿を実際に前にすると、整った造形も含めて静かな緊張感があった。人気デュオ「ゆず」の北川悠仁が挙式を行った場所としても知られ、ファンには聖地として親しまれている。

境内で特に印象に残ったのは、池の中に浮かぶように建つ能楽殿だった。総檜皮葺・総檜造りで、神池の水面と一体になったような姿をしている。案内板によれば、中央に能舞台、右に貴人席、左に橋掛りから鏡の間が設えられ、室町時代に世阿弥が完成させた能の様式を再現しているという。日本随一と言われる規模で、毎年夏には「八ヶ岳薪能」が開催され、2006年以降は「ゆず」が度々ライブを行っている。池にはさまざまな色の鯉が泳いでおり、建物や木々を映す水面に風情があった。



女神湖
翌日、ホテルをチェックアウトした後は女神湖を散歩した。長野県北佐久郡立科町にある標高約1500mの湖で、湖周は約1.8km。名称は蓼科山の別称「女の神山」に由来し、湖面に蓼科山を映す景色で知られている。訪れた11月上旬は、湖畔の木々が秋色に変わっていた。水辺には枯れた草が広がり、遠くの山並みまで見渡せる、静かな景色だった。紅葉は例年10月中旬から11月上旬が見頃で、シラカバ、カラマツ、ナナカマド、モミジなどが湖畔を彩る。特にカラマツの黄葉が湖面に映る光景で知られているが、この日は湖の周囲を歩きながら秋の空気を堪能した。暖かい時期にはカヌーやボート、冬には氷上ドライブやスノーシューなども楽しめる場所である。


諏訪大社
帰りがてら立ち寄ったのが諏訪大社だった。諏訪大社は信濃国一宮で、諏訪湖の南側に上社の本宮・前宮、北側に下社の春宮・秋宮を構える4社の総称である。今回は入口の白い鳥居が印象に残り、鳥居の先に広がる境内へ進むと、庭園や植栽もよく手入れされていた。

境内にはいくつかの建物があり、落ち着いた雰囲気の中で見応えがあった。上社本宮は諏訪市中洲宮山に鎮座し、御神体山は守屋山。本殿を持たず、幣殿・拝殿・片拝殿という諏訪大社特有の形式をとる。現在の社殿は天保6年、1835年の造替で、地元の工匠である立川流二代目富昌による竜や雲、千鳥などの彫刻が施されている。四脚門、別名勅使門は1608年、慶長13年に徳川家康が家臣の大久保長安に命じて造営寄進した建物で、幣殿・拝殿よりも古く、国の重要文化財に指定されている。境内の建物を一つずつ眺めていると、長い歴史の積み重なりが感じられた。

本宮二之御柱など、四方に立つ御柱も印象的だった。御柱祭は7年に一度行われる神事で、社殿の四隅に巨大な御柱を建てる。本宮一之御柱などの呼び名を持つ4本が、参拝客を出迎えるように立っている。境内の神楽殿は1827年、文政10年の造営で、上社で最も大きな建物。殿内の大太鼓は一枚皮としては日本一と言われ、元旦の朝にのみ打たれるという。柱の大きさや社殿との位置関係からも、諏訪大社独自の信仰の形が伝わってきた。


ほったらかし温泉
旅の最後は、山梨市矢坪にある日帰り温泉施設、ほったらかし温泉で疲れをいやした。景色がとてもよく、いつでも来たいと思える温泉だった。1999年開場の「こっちの湯」と2002年開場の「あっちの湯」に分かれ、それぞれ男女別の内湯と露天風呂を持つ。広い露天風呂の眼下には甲府盆地が広がり、天気が良ければ富士山も望める、年間約45万人が訪れる人気施設だ。入口付近には温泉名を記した木の案内と、亀をかたどった木彫りの置物があった。

山梨・長野方面は車がないとなかなか来ることができないが、見どころは多く自然にもあふれている。機会があれば、もう少し温泉巡りもしてみたいと思う。