佐渡金山を見に新潟付近を回ろうと、2025年5月、友人と出かけた。名古屋から燕三条駅付近までは、宿泊を兼ねてリーズナブルに移動できる夜行バスを利用した。
乗車前には名古屋駅内のキッチンなごや 太閤通り店で、ジャンボみそロースかつ定食を食べた。大きなロースかつはボリュームがあり、味噌の味もしっかりしていて、ごはんを食べる箸が止まらなかった。価格もリーズナブルだったので、名古屋駅付近に来た際には再訪したい。

発車時間までは近くのカフェで過ごし、夜行バスに乗り込んだ。遅い時間帯で車内は静かだったが、隣の人が不定期なリズムで寝言のようなことをつぶやいたり、床の飲み物入りのカップをこぼしそうになったりして、少し冷や冷やした。それでも耳栓を付けていれば大抵は何とかなり、朝には燕三条駅に到着。ここで友人と合流し、電車で弥彦駅へ向かった。
彌彦神社
弥彦駅はまるで神社のような造りで、最初からこの土地らしさを感じた。

駅から歩くと大きな松の木があり、自然の中に赤い鳥居が見えてくる。彌彦神社は越後国一宮で、創建から2400年以上の歴史を有すると伝えられる古社である。祭神は天照大神の曾孫とされる天香山命で、越後開拓の祖神として信仰されてきた。『万葉集』にもその名が詠まれており、参拝作法は全国でも珍しい二礼四拍手一礼だった。
境内に入ると、よく整備された広い森の空間が続いていた。小川の向こうに見える小さな水門にも意匠があり、敷地全体が一つの芸術作品のように思えた。随神門の前には凛々しい狛犬が並び、門をくぐると神社が森の中に上品に佇んでいる。家族、親戚、友人の健康と成功を祈って参拝を終えると、さわやかな気持ちになった。境内では鹿や鶏が伸び伸びと飼育されていた。新潟市街からは離れているが、付近には競輪場もあり、週末などにこちらへ来る人も多いのだろうと感じた。

境内へ続く赤い鳥居と、周囲を覆う木々の組み合わせも印象に残った。さらに森の中へ進むと、苔むした石組みの間を小川が流れ、奥には赤い橋が見える。静かな水音があり、神社の規模だけでなく、細部まで整えられた景観そのものを楽しめる場所だった。



社殿へ向かう階段や随神門は木々に囲まれ、明るい場所とは違う落ち着きがある。古い木造の建物と杉の幹が近接しているため、参拝中も森の中にいる感覚が途切れなかった。門や社殿の前に立つ狛犬も、それぞれ表情や風合いが異なって見えた。


弥彦館 冥加屋
歩き疲れた後は、神社の近くにある弥彦館 冥加屋で温泉に入った。少し早い時間帯で営業時間外だったが、ご主人らが気を利かせてくれて入浴させてもらえた。湯加減はちょうどよく、歩き疲れた体によく効いた。入浴後にはお茶とお菓子もいただき、単に湯に入るだけでなく、ほっと一息つける時間になった。たぬきの人形がモチーフのようで、館の雰囲気にもかわいらしさがある。地元の方にも観光客にも愛される温泉なのだろうと思った。


弥彦山ロープウェイ・パノラマタワー
疲れが取れたところで、弥彦山ロープウェイ山麓駅へ向かった。ロープウェイで弥彦山ロープウェイ山頂駅まで上がると、弥彦山 パノラマタワーへ行くことができる。弥彦山は標高634mで、彌彦神社の神体山とされている。山頂付近には標高を示す案内や、パノラマタワーの細長い塔があり、山の上まで来たことを実感できた。


町側を眺めると、越後平野に広がる水田が細かな区画として見え、その向こうには山並みが続いていた。反対側では、青々とした山の斜面の先に海が広がっている。越後平野と日本海を一度に見渡せるのがこの場所の良さで、ロープウェイで手軽にアクセスできる絶景ポイントという説明にも納得した。


パノラマタワーからの眺めだけでなく、山頂駅へ向かうロープウェイそのものも印象に残った。眼下の斜面や遠くの平野を見ながら上っていくため、移動中から景色を楽しめる。神社の静かな森とは違い、こちらは標高の高さを景色で感じられる場所だった。

新潟市内(たれカツ丼・今代司酒造)
弥彦駅から新潟市へ戻った後は、昼食に新潟名物のたれカツを食べるため、とんかつ政ちゃん 新潟駅前店へ入った。たれカツ丼は新潟市発祥のご当地グルメで、昭和初期に市内中心街の屋台洋食店が、カツレツを甘辛い醤油だれにくぐらせてご飯に乗せたのが始まりとされる。実際に食べてみるとクオリティが高く、店内もとても清潔だったので、店選びは大正解だった。歩いた後の食事としても満足感があった。

腹ごしらえの後は、予約しておいた今代司酒造で酒蔵見学をした。今代司酒造は1767年、明和4年創業の老舗で、新潟駅から徒歩15分という近さにありながら、菅名岳の天然水を使った全量純米仕込みの酒造りを続けている。酒蔵では昔の道具や酒造りに使われてきた器具を目にしながら、とても分かりやすい説明で製造について教えていただいた。見学を終えてから日本酒の有料テイスティングも行い、これからはさらに日本酒がおいしく飲めそうだと感じた。


早朝からかなり歩いた一日だったが、彌彦神社、温泉、たれカツ、地元のお酒まで一通り堪能でき、密度の高い旅になった。歴史ある神社と山の景色、食事や酒蔵見学をまとめて楽しみたい人に向いており、私も機会があればまた弥彦を歩きたい。