今回の旅行の最後の方の日程で、佐賀市の佐賀城と、近くの吉野ヶ里遺跡を訪れた。佐賀に来るのは10年以上ぶりだったが、駅付近はきれいに整備され、道路も広く、住みやすそうな雰囲気に変わっていた。
佐賀市の駅近くのホテルから南下して佐賀城へ向かった。佐賀合同庁舎の前にある城内通りの信号を渡ると、すぐに鍋島直正公の銅像が見える。鍋島直正は佐賀藩10代藩主で、幕末屈指の名君と評された人物である。彼が育てた人材からは大隈重信や江藤新平をはじめとする「佐賀の七賢人」が輩出され、明治維新にも大きく貢献した。青空を背景に立つ銅像は、幕末の賢君であり維新の立役者でもある人物らしく、凛々しい姿だった。

さらに少し南下すると、佐賀城の鯱の門が見えてくる。佐賀城は龍造寺氏の居城を、鍋島直茂・勝茂父子が慶長期の1607〜1611年に拡張整備したものだという。現在残る鯱の門は天保9年(1838)に完成した櫓門で、屋根の両端には青銅製の鯱が付いている。明治7年(1874)の佐賀の乱による弾痕も残り、国指定重要文化財になっている。立派な門を通ると城の中庭が広がり、城跡としての規模と歴史の重なりを感じた。

佐賀城本丸歴史館の入り口には、重厚な大砲が2つ設置されていた。佐賀城本丸歴史館は、鍋島直正によって天保年間に再建された本丸御殿を忠実に復元した歴史博物館で、2004年にオープンした。木造復元建物としては日本最大規模だという。館内ではさまざまな体験を通して佐賀城を取り巻く歴史を学べる。大隈重信だけでなく、裁判所の基礎となる制度に関わった江藤新平も佐賀出身だということは、今回初めて知った。城の建物を見るだけでなく、幕末から明治にかけて佐賀の人々が果たした役割まで理解できる場所だった。

佐賀城を見た後は、すぐ隣の佐賀県立博物館にも立ち寄った。館内では佐賀に関する多種多様な展示物を鑑賞でき、城とは別の角度から地域の歴史や文化に触れられた。佐賀城と博物館はいずれも無料だが、展示のクオリティは高い。佐賀市を観光するなら、歴史に関心があるかどうかにかかわらず、組み合わせて訪れやすいスポットだと思う。

佐賀城付近を離れる際には、くすのさかえ橋から佐賀城北濠を眺めた。水面の向こうに木々が連なり、広い濠が城を囲んでいる。橋の上から見る北濠は、佐賀城が防御面でも堅牢なつくりだったことを実感させる眺めだった。城内の建物や門だけでなく、こうした濠や周囲の景観まで見ると、城の構えがより具体的に分かる。

佐賀駅方面へ戻り、昼食には新山沙商店を選んだ。店内は非常にきれいで高級感があり、出てきた海鮮丼にはさまざまな魚介が盛られていた。新鮮で、とてもおいしかった。接客してくれた女性も親切で、ムツゴロウがどこで食べられるかを調べてくれたことを覚えている。史跡を歩いた後の食事としても満足でき、佐賀の海の幸を具体的に味わう機会になった。

佐賀市内の観光を終え、次に向かったのは吉野ヶ里町だった。佐賀市から数十分の近い場所にあり、吉野ケ里公園駅を降りると、人気RPG「ロマンシング サガ」とコラボレーションした看板が目に入った。佐賀は、その名前にちなんだアニメなどとコラボすることが多いが、インパクトがあり覚えやすいので、良い試みだと思う。そこから西へ、田園風景を見ながら歩くと吉野ヶ里歴史公園に到着した。

吉野ヶ里遺跡は、佐賀県神埼市と吉野ヶ里町にまたがる、全長2.5kmの環壕に囲まれた日本最大規模の弥生時代環壕集落跡である。1986年に本格的な発掘調査が始まり、『魏志倭人伝』に記された邪馬台国を彷彿とさせる遺跡として大きな話題になった。国の特別史跡に指定され、2001年に歴史公園として開園している。入口から園内に入ると、広い敷地に復元された建物や防御施設が続き、佐賀城とはまったく異なる時代の歴史を歩いてたどることができる。

特に印象に残ったのは、敵を退けるために鋭利な木を使った防御柵だった。溝の斜面に木が斜めに並び、集落を守る意図が直感的に伝わってくる。高床式の住居や門構えのしっかりした王の家も復元されており、当時の集落が単なる住居の集まりではなく、防御や身分の違いを備えた社会だったことが分かる。建物は青空と田園を背景に立ち、古代の生活を想像しやすい景観になっていた。




また、物見やぐらから眺める住居群の風景は格別だった。高い場所から見ると、門や建物、広場の配置が一度に分かり、環壕集落全体の構造を実感できる。園内はとても広く、徒歩だけで回るとかなり大変だが、無料のバスが運行している。私は帰りにそのバスに乗り、駅に近い方の出口まで戻ることにした。歩いて細部を見る時間と、バスで移動して負担を抑える方法を使い分けるのがよいと思う。

園内には発掘された遺構を保存しながら展示する場所もあり、土の中に残る住居跡や甕棺を間近に見ることができた。復元された建物だけでなく、実際の発掘成果を見られることで、吉野ヶ里遺跡が単なる再現公園ではなく、長年の調査に基づく重要な遺跡であることが伝わってきた。

佐賀は何もない県と揶揄されることがあるが、実際に歩くと、堅牢な佐賀城、吉野ヶ里遺跡のような非常に重要な古代の歴史、新鮮な魚介類、そしてゲームやアニメとコラボする行動力がある魅力的な県だった。次に訪れるときは、武雄の温泉なども楽しみたい。