アカバ滞在中、映画『アラビアのロレンス』で知られるワディ・ラム砂漠を探索した。砂漠、岩山、岩のアーチ、ベドウィンの宿泊体験まで、乾いた大地の中で変化のある時間を過ごせた。
到着してまず目に入ったのは、どこまでも広がる砂漠と、その中に点在する岩山だけの風景だった。赤茶色の砂地に岩塊が浮かぶように連なり、空の青さとの境目がはっきりしている。人工物の少なさも含めて、普段見慣れている景色とはまったく違っていた。

砂漠の中はWadi Rum Villageを中心に、宿などが点在している様子だった。広い大地の中に車や簡素な建物が見える程度で、集落というより、岩山の間に必要な施設が置かれている印象に近い。周囲の岩壁が赤褐色に染まり、砂の上に影を落としていた。

ガイドの案内で進んだ先には、岩山に囲まれた細い道があった。両側から岩壁が迫り、場所によっては人ひとりが通れるほどの幅に感じられる。明るい砂漠を走ってきた後だけに、岩の隙間に入ると景色の密度が急に高くなり、壁面の色や凹凸を近くで観察できた。

別の場所では、波打つような模様の岩肌に落書きが刻まれていた。自然にできた滑らかな起伏の上に文字のような跡が残り、長い時間をかけて形づくられた岩と、人が後から加えた痕跡が同じ画面に並んでいた。

細い道を抜けると、茶色い岩山が断層状に積み重なっているように見える場所に出た。横方向の層が幾重にも連なった岩壁は、短期間でできたものとは思えず、相当に長い年月をかけて形成されたもののように感じた。遠くから見ると一枚の壁に見える岩も、近づくと細かな線や段差が重なっている。

この一帯で特に印象に残ったのが、Little Bridgeだった。岩山を登っていくと、細長く展望の良い場所に出る。地元では「ラカバト・アル・ワダク」とも呼ばれ、ワディ・ラムに3つある岩のアーチ橋のうち、最も小さいものだという。橋は岩肌から約4m、谷底からは約7mの高さにあり、比較的登りやすいとされている。

横から見ると橋自体は頼りない薄さに見えたが、実際に歩いてみると危険は感じなかった。岩の上を進むと、正面には砂漠が広がり、その向こうまで岩山が連なっている。高台から岩と岩の間をのぞくと、先ほど通ってきた場所とは違う角度で砂漠全体を見渡せた。自然にできた細い岩の橋を歩きながら、周囲の広さを実感できる場所だった。



岩と岩の間には水分が溜まりやすいのか、木が生い茂っているポイントもあった。乾燥した砂漠の印象が強いだけに、赤い岩壁の下に緑の葉が広がっている景色は意外だった。岩の隙間がつくる陰と植生によって、周囲の空気も少し違って感じられた。

Little Bridgeから南下すると、Um Frouth Rock Archがある。岩によって形成されたアーチは、遠くから見ても近くから見ても見ごたえがあった。大きな岩塊の間に水平に近い形で岩が渡され、周囲の赤茶色の岩肌と一体になっている。頂上までは急だが5分ほどの短い登りで到達できるという。岩肌には現地のベドウィンガイドが刻んだ手足がかりがあり、観光客でも登りやすいよう工夫されている。頂上からの落差は約30mあるとされるため、登りやすさだけでなく足元への注意は必要だと思う。

砂漠の探索を堪能した後は夕食の時間になり、ベドウィンの独特のやり方でチキンを焼いてくれた。これはザルブと呼ばれる伝統的な調理法で、地面に掘った穴に炭火を置き、鍋を埋めて数時間かけ、肉や野菜を蒸し焼きにするものだという。実際に出てきたプレートにはチキンのほか、黄色いライス、野菜、じゃがいも、パンなどが盛られていた。砂漠の中でこれほど栄養価の高いプレートを食べられるのは、実は貴重なのではないかと思えた。

宿は大きなテントの中に二段ベッドが並び、ベッド同士の間隔も割とゆったりしていた。夜は涼しく、周囲には全く物音がなかったため、ぐっすり眠ることができた。砂漠の中で眠る機会はそれほどないと思うので、食事と同じく印象に残る経験になった。

帰路につく際、ワディ・ラムのモチーフになったヤギの標識を見かけた。岩山を背景にした道路脇の標識で、砂漠で見た荒々しい景色とは少し違う、かわいらしい締めくくりだった。

実際に生活するには大変なことも多いと思うが、アカバを拠点にアラビアのロレンスゆかりの地域と砂漠の雰囲気を気軽に楽しむなら、ワディ・ラムは良い選択肢だと思う。ガイドは親切で、宿もリーズナブルだった。